家づくりこぼれ話!
こんにちは
建物と土地とお金のプロ菅原です。
住まい文化の栞
mille neuf cent vingt-cing
「いのち輝く未来社会のデザイン」
をテーマにした万博が開かれています。
ちょうど100年前の1925年の万博は
フランス・パリでした。
そのパリ万博の正式名称は
「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」で、
第一次世界大戦からの復興を目指す
フランスが芸術と産業の融合によって
「生活に美を取り戻す」
ことを掲げたものです。
そこに花開いた美術様式が、
後に「アール・デコ」
と呼ばれることになります。
そしてフランス語で1925年を表す
「ミルヌフサンバンサンク」
とも呼ばれています。
アール・デコの特徴は、
幾何学的で洗練されたフォルム、
高級素材を用いた装飾、
そして生活の中に
芸術を溶け込ませる思想にあります。
それは建築家や家具、
ジュエリー、ファッション、
グラフィックにいたるまで
多分野に広がりました。
加えて、
この様式には日本の美学が
静かに息づいています。
19世紀末以降の
ジャポニズムの流れの中で、
浮世絵や工芸に見られる余白、
非対称性、素材へのまなざしが、
アール・デコの意匠に
取り込まれました。
この文化の融合が生み出したのは、
単なる装飾ではなく、
異なる価値観の対話でした。
幾何学と自然、機能と美、
工業と手仕事といった間にこそ、
アール・デコの魅力が存在します。
一方で、
新たなライフスタイルや
消費社会の在り方も提示されました。
しかし100年が経った今、
大量生産・大量消費によって
成長した世界が、
環境問題や資源の限界に
直面しつつあります。
これからのデザインには、
持続可能や循環性といった
倫理的視野が不可欠です。
素材や生産方法、
廃棄の在り方にまで配慮した
構造的な美しさが、
未来に必要とされる姿なのです。
mille neuf cent vingt-cing から100年。
文化と美意識をめぐる旅は、
なお続いています。
それは過去の記憶ではなく、
未来を形づくるための知恵として、
今を生きる
私たちのテーマになります。
日本とドイツは、共通点が
多くあるように思えます。
経済力や、敗戦からの
復興などがその一例です。
さらに、
古い企業が多く残っている点でも
共通しています。
職人の伝統技術が受け継がれ、
中小企業が
生き残ってきたことが、
長寿企業の存続につながっている
大きな要因です。
ドイツには
ギルドによる職人文化が残り、
日本にも
職人を尊ぶ風潮があります。
この職人の世界では、
技術は単なるテクニックとは
捉えられていません。
茶道、華道、武道に通じる「道」を
極めるものとして
継承されてきました。
単調になりやすい職務でも、
「道」として追求すれば、
探究心は尽きることなく
深まっていきます。
そしてやがて、
職人の技は芸術へと
昇華していきます。
職人の技術を
「芸術」ととらえることは、
日本的であり
東洋的にも感じられますが、
ドイツのギルド文化にも
共通点があります。
それどころか、
じつは「アート」の語源をたどると、
西洋にも全く同じような
ニュアンスがあるようです。
古代ギリシャ語の「テクネー」が
ラテン語で「アルス(ars)」と訳され、
それが英語の「アート(art)」や
フランス語の「アール(art)」
になりました。
これらの言葉には、
日本語で「技術」や「芸術」が
対応しますが、
もともとは、
一つの意味だったのです。
それは、
自然に対して人間が生み出したもの
全般を指していました。
もちろん、
家づくりにもアートであって
よいはずです。
ただ、
テクノロジーとアートには、
感覚的な違いがあるようにも
感じます。
たとえば、
性能や最新設備を詰め込んだ家には
テクノロジーを、
デザイナーのこだわりが光る家には
アートを感じるのかもしれません。
しかし、
日本各地に残された、
名もなき職人たちによる
古民家の小屋組みを見ると、
そこには
テクノロジーとアートの
両方が存在しています。
技や術を極め、
職人の息吹を今に伝えるものこそが、
ほんとうの意味での
「技術」なのかもしれません。
おうちのはなしからでした
では、では。
「家づくりを通じて、
ご家族が幸せになるお手伝いをする」
私の使命です。